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東京地方裁判所 昭和47年(むのイ)817号 決定 1972年9月28日

主文

右の者に対する頭書被告事件について、昭和四七年九月二一日東京地方裁判所裁判官がなした保釈許可決定の指定条件第五項中被告人に対し、直接被害者以外の事件関係者と面接することを禁止している部分を取り消す。

その余の申立を棄却する。

申立の趣旨 原裁判中指定条件第五項を取り消すとの裁判を求める。

申立理由の要旨 原裁判が指定条件第五項において、被告人が直接被害者その他事件関係者との面接を禁止しているのは、憲法三七条等に保障する被告人の防禦権を著しく侵害するものであり、本件が労働争議の過程で発生した関係で、憲法二八条に定められた労働者としての基本権の行使を禁ずることにもなる。なお、本件発生当時弁護人も現場で現認していたものであり、事件関係者たる地位を兼ね備えている。

当裁判所の判断 本件保釈許可決定には、指定条件第五項として「被告人は直接被害者及び事件関係者と面接してはならない。」と記載されている。一件記録により認められる本件事案の発生に至る経緯、犯行の態様、被告人の本件についての捜査官に対する供述内容等に鑑みると、被告人がその所属組織を動員して被害者らに圧力をかけるおそれがないとはいえないので、原裁判が保釈を許可するにあたり、被告人が直接被害者と面接することを禁止する旨の条件を付したことは相当であると認められるがこれまで収集されている証拠の質および量、被告人の生活環境、本件事案の軽重などを合わせ考えると、被害者以外に広く、本件の事件関係者一般について、被告人の直接の面接を禁止するまでの必要性は認め難い。(なお、申立人の憲法違反等の主張は、もとより理由がない。)以上の理由で、原裁判の指定条件第五項中の被告人に対し、直接被害者以外の事件関係者と面接することを禁止している部分は、これを取り消すのが相当であり、結局、本件準抗告は右の限度において理由があることになるので、主文のとおり決定する。

適用した法令 刑訴法四三二条、四二六条一項、二項

(裁判長裁判官 鬼塚賢太郎 裁判官 片岡安夫 安廣文夫)

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